NO.15 コヘラナレン
Crepidiastrum grandicollum (Koidz.) Nakai

固有種:キク科・アゼトウナ属)

 
(2003年、10月:父島) コヘラナレンの根生葉


 コヘラナレンの花が岩石地にポツンと黄色い花を咲かせていました。
多年草。
葉は楕円形で全縁、やや厚みがあり表面に粉白色を帯びています。根生葉を輪生して付く。草丈は10cm程、花茎を伸ばすと25cm程になります。花茎につく葉は根生葉とは違い互生し花茎を抱き込んでつきます。
花は頂に多数の頭状花序(例:タンポポ)をつけ、ひとつに見える花は中に5個の小花(雌しべと雄しべ)があります。雌しべの柱頭は2個。
近縁種は母島に成育するアゼトウナ属のヘラナレンです。

 コヘラナレンは父島と兄島だけに分布している絶滅が危惧される植物です。以前はTB類(EN)に分類されていましたが、現在は絶滅危惧種TA類(CR)に指定されています。

コヘラナレンは父島でもごく限られた生育地にしかなく、兄島ではコヘラナレンの生育地が崩落したこともあります。


(2004年、10月:父島)
 コヘラナレンが絶滅に瀕している要因には、コヘラナレンがノヤギの好物であることがあげられます。
この事からコヘラナレンの生育地は、現在ネットの柵などで厳重に保護されるようになりました。
しかし、(2005年頃だったでしょうか)たった一時ヤギの食害を受けたとある群生地では1株に減ってしまったところもあります。
その後の柵設置もむなしく、なかなか個体数が増えてきません。
コヘラナレンのような草本でも、回復にはある程度長い時間が必要なのでしょう。

こうした自体を回避する為には、絶滅危惧種のモニタリングで食害の有無や個体の小さな変化に気がつくこと、その後、早く柵の設置をすることが大切です。
絶滅危惧種の保護は、ノヤギのいる限りいたちごっこの作業ですが、地道に保護をしていくしかない厳しい現状です。
小笠原の自然は、人の移住にともなって大きく変貌してきました。今現存する残された種を人類共通の財産として、できるだけ維持しながら残していきたいものです。

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