NO.11ムニンタツナミソウ
Scutellaria longituba Koidzumi

固有種:シソ科・タツナミソウ属)

(3月:父島・東平字東海岸)
 
 ムニンタツナミソウは、父島と兄島に自生する小笠原固有の植物です。
多年草。草丈約15cm〜25cm。
旭平から躑躅山までの林内や岩石地に見られ、さわやかな印象は小笠原の春を感じさてくれます。
花の先端が淡紅色の個体(4月:父島・東平)  白色の個体(3月:父島・東平)
 花は白色から淡紅色の総状花序。花期は3月〜4月。果期は5〜6月。
花の長さはおよそ5cmとその花筒は非常に長く、立浪草(タツナミソウ)という花を波に見立てた名前がより一層引き立つ綺麗な花です。花弁は5枚、唇形で花には目立たない毛があります。
 改めてこの花を見ると、蕾は上と下の花弁でうまく閉じていて、下唇が下りて開く構造になっているようです。雄しべは4本雌しべは1本。2長雄しべ(4本の雄しべのうち2本が長い。例:ツユクサ)で2本は雌しべと同長で開いた上唇から顔を覗かせる。他2本の雄しべはやや短い。花筒には蜜が溜まっています。訪花昆虫についてはまだ分っていない植物です。
 陽光地の葉  樹影地の葉
 葉は、陽光地ではやや厚く葉脈に沿って凹凸が出るものが多いのに比べ、樹影で育つものは葉は柔らかい印象があります。
 茎には4つの稜があり、葉は十字対生(隣りの節の葉は互いに直行してつく。植物を上から見ると十文字になっているのが分る)。辺は低い波状の鋸歯があります。
夏は弱まりますが枯れることはありません。

 ところどころで小群落をつくるムニンタツナミソウは、個体数が多いものの花はヤギの食害を受けやすいようでまともに咲いている群落は少なくなってきています。とくに東平で見る花は2004年から急激に減りました。葉までは食べないので個体数がすぐに減ることはありませんが小笠原の草本植物の中でも美しい花であるムニンタツナミソウが見れなくなるのは残念です。
 茎と葉(対生)
 花が終わると、結実しているものはがくを閉じ、うまく受粉できなかった花のがくの口は開いたまま、すぐに落下します。

果期は、5月〜6月上旬ごろ。
この頃になると、花茎は茶色く枯れます。中には褐色の毛に覆われた直径2mm程の種子があります。
口は再び開くことなく花茎ごと落とします
果実(2008年5月:父島)



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