NO.30 ムニンゴシュユ
Evodia nishimurae Koidz.

固有種:ミカン科・ゴシュユ属)

 ムニンゴシュユは、父島列島(父島、兄島)にのみ分布する小笠原固有の常緑樹です。絶滅危惧種TB類(EN)で、個体数はやや少ない。
父島では島の中央部に分布し、東平の歩道沿いに見ることができます。

 樹高4〜5m程。
樹皮は白褐色〜クリーム色のような色で滑らか。古木になると、コルク質のような質感になります。これほど白っぽい幹は他にないので、林内の幹を見ればすぐに所在が分かります。
ムニンゴシュユの木はやわらかく、腐って枯れてしまうことがあります。

葉は3出複葉。黄緑色〜緑色で皮質。
小葉は長楕円形で先端はまるく、長さ5〜10cm程。無毛。

春に新しい葉を出し、花を咲かせます。
ムニンゴシュユ全体像
花(雌花)と葉(2008年4月:父島) 花と葉

 花期は4月ごろ。雌雄異株。
円錐花序を伸ばし、白黄緑色の花を咲かせます。花全体に毛が多い。
花の大きさは4〜5mm程で、オオバシロテツよりも大きい。雌花は大きな子房があるので目立ちます。

雄花(雄株の花) 雌花(雌株の花)
 果期は、8月ごろ。
6〜8mm程の果実は、黒い光沢のある種子をはじき出します。

 ムニンゴシュユは、単葉と複葉の違いこそありますがシロテツ属との共通点が多い植物です。花と果実の時期は、シロテツやオオバシロテツなどと重なります。
父島では、シロテツ属とムニンゴシュユとの間に中間的な個体(雄株)が見つかっています。この「問題の植物」は単葉と3出複葉の葉を持ち、花の毛の形態も中間的なのだそうです。

ムニンゴシュユは、ハマセンダン(ゴシュユ属)に近縁があるともいわれていますが、外見は異なる印象を持ちます。一方のシロテツ属は、ハワイ固有のPelea属に近縁があるといわれています。
果実(2004年8月)

[参考文献]

小笠原研究年報23 
父島東平学術参考林で見つかった奇妙な植物 -シロテツとムニンゴシュユの中間型?-
加藤英寿・加藤朗子
 


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