アカテツ
Planchonella obovata (R.Br.) Pierre

(アカテツ科)

(2003年8月:父島・夜明道路沿い) アカテツとヒメフトモモが山を彩る(2004年8月:兄島)
葉(8月) 雌花(2008年6月:父島・釣浜〜宮之浜遊歩道)
 アカテツは、小笠原諸島、琉球〜台湾、中国南部〜東南アジアに分布する植物です。
小笠原の海岸付近から山頂部にかけて広く分布し個体数も多く、集落付近でも普通にみられます。
一番上の写真は、夜明道路沿いの旭平展望台付近にあるアカテツです。

 アカテツは、初夏を迎える6月から7月ごろにでてくる新葉が茶褐色に輝いていてとても美しい植物です。
ヒメフトモモの赤い新葉とともに南国を感じさせるカラフルな景観をつくっています。

樹高、2〜5m程。母島の石門では18mになるそうです。
樹皮は黒褐色。木は傷つくと白い乳液がでます。

アカテツは、新しい葉や茎やがくなどに茶褐色の微細な毛を密生させます。
新葉の時はメタリックな光沢のある茶褐色ですが、成長するにしたがって表面は緑色〜濃緑色でやや光沢のある葉へ、裏側も古くなると茶褐色がなくなります。
アカテツは稀に葉の裏側に毛が少なく、葉が緑色の個体もあります。
全く毛がなくて樹皮が黒灰色のものは、よく似たムニンノキという別種があります。
ムニンノキの葉は普通アカテツより大きく丸みのある葉ですが、たまにアカテツとよく似た幅の狭いタイプがあります。

アカテツの葉の付け根はくさび形で幅が細いものが典型的ですが、小笠原の広い地域に分布するオオバシロテツやコブガシなどと同様にアカテツの葉の変異も大きい植物です。
・倒披針形、長楕円形〜長卵型で革質。
・葉の長さ:6〜15cm。
・葉の幅:2〜6cm。
雄花(2008年6月:父島・巽道路付近) 雌花
 6月中旬頃、新しい枝の葉腋(ようえき:葉の付け根)から花柄が伸び花が咲き始めます。
今回、私が観察したところアカテツは雌雄異株のように見えたのでまとめてみました。

雄花(もしくは両性花)は、がくから淡緑色の花弁が開きます。
子房(しぼう:果実になるところ)のような大きな膨らみがなく、黄色の花床(かしょう:雌しべや雄しべを支える部分)が見えます。
セイヨウミツバチが多数訪れていました。
・花径:7〜8mm。
・花の高さ:3〜4mm。
・花柄:8〜9mm。

雌花は、雄花に比べて小さい花です。
花弁がなく、子房に雌しべが伸びただけの花です。
雌しべの先にある柱頭は、先端が5つに分かれて花模様のスタンプのような形をしています。
雌花は蜜の分泌量が多く、花にはセイヨウミツバチが訪れていました。
・花径:2.5mm。
・花の高さ:3mm。
・花柄:4〜5.5mm。

 典型的なアカテツの花柄は、典型的なコバノアカテツに比べて約2倍ほど長い特徴がありました。
 雌花の下には、前回実った果実が大きくなっていました。(写真左)今回咲いた雌花でも、早いものはもう実になりかけていました。

アカテツの果実はオガサワラオオコウモリも食べるという報告がありますが、この日見たのは全て未熟な果実なのでネズミによる食痕の可能性も考えられます。
果実の中には茶色の種子があります。(写真:食痕(1))

右下の写真(食痕(2))は熟している訳ではなく、蛾の幼虫が入っていた痕です。蛾の幼虫が入っていることも多いようです。

 アカテツやコバノアカテツの新葉はとても綺麗ですが、しばらくするとアブラムシの仲間が付きやすく、その後すす病になって黒っぽく汚れることがよくあります。
雌花と果実(2008年6月:父島・釣浜〜宮之浜遊歩道)
果実の食痕(1) 果実の食痕(2)
 このアカテツのページは、私個人の観察をまとめたものです。
アカテツとコバノアカテツは今後も観察を続け、また新しい情報が分かれば更新します。
観察個体がまだ少ないのがデータ量として心残りですが、素人のミニ報告とお許しください。
(観察地:釣浜遊歩道、長崎展望台、巽道路、コペペ道などの道沿い。観察個体:大体20〜30個体)

研究者による小笠原諸島と大東諸島と他地域を含めた本格的なアカテツとコバノアカテツの研究が望まれます。

広分布:木本類の表紙にかえる