コバノアカテツ
Planchonella obovata (R.Br.) Pierre var. dubia (Koidz. ex H.Hara) Hatus. ex T.Yamaz.

(アカテツ科)

(2002年6月:父島・初寝浦遊歩道)
雄花(2008年6月) 雌花(2008年6月)
 コバノアカテツは、アカテツの変種の常緑樹です。
小笠原諸島と大東諸島にのみ分布し、小笠原諸島では、父島、兄島、弟島、母島、向島、姪島に自生しています。
小笠原での分布域は限られていて、個体数はやや少ない。大東島でも少ないようです。
絶滅危惧種TB類(VU)に指定されています。

コバノアカテツは、亜高木になるアカテツからより乾燥した岩石地に適応し、低木になった植物です。
シマイスノキとともに樹高1m以下のわい性低木林をつくる主要樹木のひとつになっています。
コバノアカテツはアカテツより葉が5cm以下の小型で、厚みがある葉先の丸いものが典型的です。

しかし、コバノアカテツとアカテツは隣り合っていることも多く、変種というだけあって両種の違いは典型的なものを除いては連続しているようにも見え、的確な区別は非常に難しい植物です。
文献ではアカテツによく似た倒披針形の葉をした低木もコバノアカテツに含める様で、小笠原図譜にはアカテツによく似た葉のタイプの写真が載っています。
雄花 雌花
 今回は、花の特徴について観察しました。

雄花は、アカテツ同様に花弁があります。
・花径:6mm。
・花の高さ:4〜5mm。
・花柄:3mm。

雌花は、これもアカテツ同様に花弁がなく、子房に雌しべが伸びただけの花です。
雌しべの先にある柱頭は、先端が5つに分かれて花模様のスタンプのような形をしています。
雌花は蜜の分泌量が多く、写真を写した日は大勢のアリが忙しなく働いていました。
・花径:3mm。
・花の高さ:3mm。
・花柄:3mm。

 典型的なコバノアカテツの花柄は、典型的なアカテツに比べて半分程度短い特徴がありました。
コバノアカテツとアカテツの花柄の長さの違いは、小笠原固有種のムニンモチとシマモチの違いが葉の形の他に花柄の長さや果実の形などで判断していることを考慮すると、重要な区別点になりえると私は考えています。
 このコバノアカテツのページは、私個人の観察をまとめたものです。
コバノアカテツとアカテツは今後も観察を続け、また新しい情報が分かれば更新します。
観察個体がまだ少ないのがデータ量として心残りですが、素人のミニ報告とお許しください。
(観察地:初寝浦遊歩道。観察個体:大体10個体未満)

 コバノアカテツとアカテツは、その風貌に南国的な美しさがあるばかりでなく、コバノアカテツが貴重な植物ということや、大東島と小笠原の植物のルーツについて考える点においても魅力にあふれた植物です。
コバノアカテツが変種ではなくアカテツの種内変異にすぎないのではないかという疑惑もあります。
研究者による小笠原諸島と大東諸島と他地域を含めた本格的なアカテツとコバノアカテツの研究が望まれます。

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